___ポジティブだって人からよく言われるんだけど、昔は超陰キャだった。
そう語るのは、京都芸術大学(ex京都造形芸術大学)の文芸表現学科を学長賞受賞という華々しい結果で修了した石川さとるさん。
今回は卒業制作の過程と、題材にした旅について、そして何より石川さん自身について、お話を聞いていった。
文芸表現学科に入ろうと思ったきっかけはなんですか?
元々、面白そうだから芸大に行きたい、っていう思いがあったんだよね。芸大に行きたい。でも絵が描けない。で芸術的センスがない。けど入れるとこないかなと思ってそれで各学科を調べて見つけた。
本はめちゃくちゃ読むわけじゃなかったけど、まあそこそこ読むほうではあったし、ここならって。
だから実は文章を書きたくて入ったわけじゃないんだよね。
(Mitsuki:以下M)なるほど。賞を取られた方が文章を書きたくて入ったわけではないというのは驚きです。
芸大の面白そうって感じたポイントなどは?
はっきりとこれだ! っていうのは無くて、ただ結構受け身な性格だったから、周りの人が面白ければ面白いことが起こるだろうっていう希望があって入ったって感じかな。
卒業制作はルポルタージュでしたが、旅をしようと思ったきっかけっていうのを聞かせてください。
はじめて行こうと思ったきっかけっていうのは中学生のとき。石川直樹さんの「今生きている冒険」という本を読んで行こうってなったのが最初。それまで行きたいっていうのはなんとなくあったんだけれど、ちゃんと自覚して、認識して旅に行こうと思ったのはそのときかな。
ルポルタージュですので、もちろん場所を意識されているとはと思うのですが、実際旅をしている最中は何か考えたり大事にしたことってありましたか?
旅に行ってるときは特にこうしようって意識はなくて。単純に、その国の宗教観でやってはいけないことはやらないようにしよう。いわゆるマナーとかルール面だけは気にして、それ以外の面に関しては、そのつど起きたときに選択するみたいな感じ。
基本的には「今日アレをしてコレをして」というより「今日どうしよう」ってとこから一日を始めるみたいな。
旅の記録などはつけていましたか?
行く前から一応卒業制作にするって話は決まってたし、日記は書いてたよ。なにもなしに書いてしまうとはちゃめちゃになっちゃうって思ったからね。
後々見てから思い出せるようにその日起こったことを書いてた感じ。まあでも情景描写も含めて書いてたから、ほぼ卒業制作の原型といっても良いかな。
書くとき、読むときになにか意識してることがあれば教えてください。
読むときはなんも意識してないかな。書くときに関しても普段からあんまり変わらない。確固たる意識をもっているっていうのはあんまりなくて、ただ書く、みたいな感じ。
ただ卒業制作に関しては、誰よりも多分書いたって思ってる。なんなら書き上げたらこれ以降人生において書くことはないと考えてたくらい、もうずっとそのことしか考えてなかった。
(M)この先書く予定がないとお聞きして驚きです。本当に卒業制作以降全く書いてないんですか?
ちょっと書いたりはしたけど、散文みたいなものが多い。書きたいものはこれじゃないって感じがしてる。元々書きたくなったら書くみたいな感じだから、もういっかい旅に行ってからかな。
でも実は書いてるときはこれで最後って思ってたけど、時間が経ってから、あー俺次も絶対書くなという気持ちにもなってる。
(M)それを聞けて、とても嬉しいです。次作も楽しみにしていますね。
ここらは卒業制作についてではなく、石川さん自身のことを聞いていきたいのですが、石川さんのポジティブな姿勢や、行動力にはいつも驚かされています。そうなったきっかけってあったりするのでしょうか?
ポジティブだって人からよく言われるんだけど、実は俺小学校低学年ぐらいまでは超陰キャだったんだよね。授業中当てられて読めなかったタイプ。人前にでるのも全然だめで、お遊戯会とかで劇とかもやれなかった。
変わったのは小学校中学年の頃。
それまでは病弱で、入院生活とかで全然学校行ってなかったときとかもあって、友達も少なかった。
けど三年生ぐらいになったときに、突然体が強くなって皆勤賞になったんだよね。
同時にすごい外に行くのが好きになって、家にいられない。今まで動けなかった分、とにかく遠くに行きたいみたいな思いがすごくあったんだと思う。
あるとき頭で考えられる範囲の一番遠いところに行こうと思い立ってさ。結局、車で家族で出かける場所が遠いところだって思って、バスを使ってあっちこっち一日中回ったんだよね。その当時、市バスが無料だったっていうのもあってよくそういうことをしてた。あるとき夜遅くなってバスがなくなったりしたこともあったりして、今思えばあれが初めての旅だったのかもなんて。
(M)なるほど、そうなんですね。ポジティブな姿勢については、実は陰キャだったと聞いても信じられない気持ちが大きいですが、先輩のアクティブな姿勢のルーツが聞けた気がします。
好きな作品や、逆に苦手な作品はあったりしますか?
本だったらいとうせいこうとか安部公房とか。音楽なら色々聞くけど、YMOとかスピッツかな。多分、大学の同期の影響をめちゃくちゃ受けてる。
苦手なのでいうと山下澄人とか。ああいう文章読み取るのを諦める形の、なんかヤバい文章書いてる系の小説家が結構苦手。
同期はそういうのが好きなヤツが多くて、甘受しなくちゃっていう同調圧力を感じてたから毛嫌いしてた時期があった。でもいつか読んでみたいとも思ってるよ。
この文芸みぃはぁというチームを作る際、石川さんが作った『MOUSA+』というチームがあることを沢山の人に教えていただいて、とても参考にしました。小説だけじゃなくて、映像にしたり音楽にしたりするというのに感銘を受けました。先日のも素晴らしかったです。『MOUSA+』について聞かせてください。
ありがとう。あれは単純に映像編集技術上がったから、もう一回作り直したんだけど、そう言ってもらって良かったよ。
『MOUSA+』については、俺がやりたいことに付き合ってもらったっていうのが大きいかな。
同級生に書くのが上手い人が多くてさ。俺は書けないっていうコンプレックスを感じてた。
じゃあ逆に自分は何ができるだろうって考えて、自分は人に話しかけたりとか音楽が出来るなって思い当たった。それぞれができることをやっていったら出来上がったのが『MOUSA +』って感じ。
なんか、メンバー7人でやって刺さるものがあるなら、いいという人がもっといるはずだよなって思って、どんどん活動していった。
今は、やるんだったら連絡してなとは言っているんだけど、それぞれ忙しくて活動はできてない。何より俺が、次の旅のためにお金貯めたりでバタバタしてる笑。
(M)ありがとうございました。石川さんのこれからの作品と活動を楽しみにしています。
また『MOUSA+』とのコラボしたり、石川さんにも遊びに来ていただけたら幸いです。
本日はありがとうございました。
石川さとる
2018年度学長賞を受賞し、京都芸術大学(ex京都造形芸術大学)を卒業。文章の才能もありながら、音楽では閃光ライオットという新人発掘オーディションでライブ選考までいった実績を持つ。自身も旅を趣味、生業としており、様々な地に足を置いてきた。卒業制作『伝播通信』では、旅先で起こった、どこか非日常だけれどこの世界に確かにある状況が、シンプルな言葉で鮮明に描かれている。
『MOUSA+』の動画はこちら
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