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執筆者の写真Mitsuki

〈大内著「BL」インタビュー〉


―――美男美女ばかりが出る物語へのアンチテーゼを書きたかった。

「BL」

タイトルで敬遠する人もいるかもしれないが、内容は男女どちらにもやわらかく確かな衝撃を与えるものに仕上がっている。

今回は、今作において彼がどんな思いや意図があって書いたのかをインタビューしていく。


※画像は本人の要望もありフリー画像を使わせていただいております。

大体同じような表情とポーズをしておりましたので、イメージとしてお楽しみください。

第一稿の完成、おめでとうございます。まずは作品を書き上げてほやほやの思いを聞かせてください。

やっと終わったって感じですね。今回は自作の中でも一番長い作品だったので、疲れがどっと来ました。



お疲れさまでした笑 この作品を書くことになった経緯を教えてください。

そもそもはエッセイ的なものを書こうとしていましたが、小説にしたほうが面白いのではないかと思ったのが最初。

「ゲイは自分と同じ見た目が好き」に対して主人公が嘆くお話を書こうとしていましたが、小説にする上で嘆きの要素はそのまま、主人公の見た目をデブにし、好きになる相手をイケメンにすることによって、叶わない恋であるということを強くしました。


なるほど。エッセイからの小説にしたことによるリアリティを確かに感じます。(Mitsuki)


この作品のテーマやコンセプトはありますか? またそれは書き上げる前と書き上げた後で、変わりましたか?

元々は主人公がコンプレックスを克服し自己肯定する話を書きたかったんです。それ以外は物語も最後はどうするかをあまり決めていなくって、書いていく中で色々追加していきましたね。小説を書くという要素も結構思い付きで追加したんですが、それが最初に決めたテーマと上手く絡み合っていい方向に働いてくれたと思っています。


確かに、小説を書くということが作品の一つの柱になっている気がしますね。(Mitsuki)


この作品はどういうところから着想を得たのですか? 体験や参考にした資料などあれば教えてください。

「同じ見た目の人を好きになる」というネットの情報がずっと頭に残っていて、そこにもともと使いたかった「デブ×イケメン」という構図をあてはめました。

この作品のキャラクターたちはそれぞれのとても魅力的です。参考にしたキャラクター、または実在する人物などはいますか?

主人公の佐々木の30%ほどは自分をイメージしました。見た目は拾った好みのネット画像を参考にしています。

松本は特になく、アユミに至っては途中まではなかったのですが、先輩の妄想により声優の富田美優さんの演じるような真面目キャラクターをイメージするようになりました。あとは数人の同級生の要素を組み合わせて書いています。



その節はお世話になりました笑(Mitsuki)


作品の中に多くのギャグが見られます。お笑いは普段から見られますか?
また、自分のギャグセンスに大いに影響を受けているものがあれば教えてください。

特にありません。ただ元々作中でふざけたいという欲求はありました。物語だけでなく文章を読んで面白いと思って欲しいという気持ちは大事にして書きましたね。

小説という媒体では、どうしても読者に想像させるという負担をかけます。そんななか、太っている主人公、という負担の大きくかかる想像を強いるような設定にしたわけはなんですか。そして、その描写をする中で気をつけたこと、工夫のポイントを教えてください。

今まで様々な作品を観てきて、美男美女ばかりが主人公を演じていることが多く、ずっとそこに疑問を感じていました。なので、そこに対するアンチテーゼの意味も込めてこの設定にしましたね。

気をつけたことは、リアルではないけれどデブってこうだよね、と思うほどのリアリティのあるステレオタイプデブにすることです。例えば弁当を二つ食べるところとかですね。

一方「太っていても冬風は寒い」という描写は、実際の声を参考にしているので、当事者には共感を得られるんじゃないかと。



なるほど。確かに、マイノリティを主人公にしつつもどこか自分と似ているような気分になるのが今作の一つの魅力で、多くの人を楽しませる工夫だと思います。(Mitsuki)

これを読んだ読者にどう感じて欲しい、または伝えたいメッセージなどはありますか。

まずは好きなものを包み隠さず必要はない、たとえ人から気持ち悪いと言われてもその芯を曲げる必要はないということを伝えたいですね。本を読んでいる人には周知の事実ですけれど、小説を読むということの価値を伝えたかったのもあります。

あとはデブに対する偏見が少しでも和らいで、あわよくば好きになってくれたら嬉しいですね笑


作品内で描かれている上手くいかなさなんかは多くの人に共感されて、太っていたり変わっていると周囲に言われがちな人も自分と同じ人間なんだなと気づく人は多いんじゃないかなと思います。(Mitsuki)

この作品でよく書けた、好きだと思う部分、その逆もそれぞれ教えてください。

キャラクターは意識したので、よく書けていると思います。今までは道具のように扱っていましたが、今回は道具ではありつつも息が吹き込まれたように書くことを意識しました。読者がそうだね、確かに、と思ってくれていたら嬉しいですね。

少し前の質問とも関わってくるんですが、ギャグは個室のくだりが自分でもお気に入りだったりします。

しゃぶしゃぶパートなどのセリフが多いところでどうしても地の文が少なくなってしまったこと、描写が上手くできなかったことが反省ポイントですね。

なるほど。自分の執筆のクセを理解して、改善点も分かっているのは、凄いと思います。(Mitsuki)

次作品の構想などあればお聞かせください。

今作はマイノリティの苦悩を書いたことで純文学寄りになったと自分では思っているので、次作は多くの人に笑ってもらえるエンタメを書いていきたいと思っています。

ただデブとゲイの話は今後も書いていきたいですね。

今作でもだいぶ笑わせてもらったし、考えさせられたりで面白い作品だったのですが、更に笑える作品を書きたいと聞き、期待で胸が膨らみます。作者の特徴でもあるデブとゲイについての話はリアリティもありつつ、笑わせてくれる要素だと思うので、自分も書いていってほしいと思いますね。(Mitsuki)

本日はありがとうございました。




大内

2000年四国生まれ。小中高という花の青春時代、放課後は友人の家にも遊びに行かず、また招き入れることもせず、ドラマを観続けたという猛者。その数は百本以上にも及び、現在の地に足着いたリアルな世界観もそこから培った。

大学に入ってからも、多くの短編小説を創作。犯罪を扱ったエンタメ的作品を書いていたが、今作「BL」で初めて自分の要素や趣味嗜好を使ったものを執筆した。そのほか短歌や俳句でも類稀なる才能を発揮し、周囲を驚かせている。

チーム「文芸みぃはぁ」に所属し、ドラマで培った物語論と、俳句短歌で培った着眼点や組み合わせの法則を併用して、普遍的でありつつも強い意見を出すなどして活躍中。


彼が今まで企画で書いた作品はこちらから読めます↓


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